公開日

2026年7月28日

デジタルフォレンジック三原則とは?目的や手順と合わせて解説

デジタルフォレンジック三原則とは?目的や手順と合わせて解説

デジタルフォレンジックの「三原則」は、電子証拠の信頼性を理解するうえで用いられる考え方の一つです。適切な証拠保全や解析の進め方を理解することで、インシデント発生時に原因究明や被害状況の正確な把握へつなげられます。本記事では、デジタルフォレンジックの基本的な仕組みや三原則の内容、具体的な活用事例、調査を行う際の手順について解説します。

Cloud Mail SECURITYSUITEのサービス資料を受け取る

ENTERPRISEAUDIT Σのサービス資料を受け取る

デジタルフォレンジックとは

デジタルフォレンジック(デジタル鑑識)とは、PCやサーバ、スマートフォンなどの電子機器から、犯罪や不正の証拠となるデジタルデータを抽出・解析する技術や一連の手続きのことです。法的な紛争や企業内不正、サイバー攻撃が発生した際、データが「改ざん」や「消去」されていないことを証明し、裁判所や関係機関に証拠として提出できる形式に整える役割を持ちます。

企業のガバナンスや情報セキュリティにおいて、極めて重要なプロセスです。

PPAP対策やメールセキュリティ強化サービス

サービスの概要資料を受け取る

デジタルフォレンジックの三原則

デジタルフォレンジックを実務で適用する際、抽出したデータに法的証拠能力を持たせるための基本指針が存在します。これが「デジタルフォレンジックの三原則」です。手続の正当性、解析の正確性、第三者による検証の3要素から構成されており、これらを厳格に遵守することが調査結果の信頼性を担保します。

1.手続の正当性

デジタルフォレンジックにおける手続の正当性とは、データの抽出や保全において、法的な手続きや適切な権限に基づいて調査が行われている状態を指します。仮に不正の証拠を発見したとしても、令状のない差し押さえや、社内規定を無視した違法な手段で取得したデータは、裁判において証拠として認められない可能性が高まります。そのため、事前の同意取得や適切な指揮命令系統のもとで調査を進めることが不可欠です。

※参考:証拠調べ手続 | 裁判所

2.解析の正確性

解析の正確性とは、調査対象から抽出したデジタルデータが、改ざんや破損のない状態で正確に複製・分析されていることを指します。実務では、元の媒体から直接データを読み込まず、特殊な機器を用いて「複製(イメージング)」したデータに対して解析を行います。この際、複製前後のデータが完全に一致していることを証明するために、ハッシュ値(データのデジタル指紋)を用いて同一性を担保することが不可欠です。

特にインシデントの原因になりやすいメールやビジネスチャットのデータは、有事の際に過去のログを書き換えや削除のリスクが常に付きまといます。そのため、日常的な運用の中で「あらかじめ改ざんできないシステム(アーカイブ)に自動保管しておくこと」が、解析の正確性を最初から担保する最も確実なアプローチとなります。 

※参考:サイバー警察局|警察庁Webサイト

3.第三者による検証

第三者による検証とは、調査によって得られた結論や証拠が、他の専門家や客観的な機関が同じ手順で検証した際にも、全く同様の結果として再現できる状態を指します。特定の調査会社しか行えない方法や、ブラックボックス化された独自の技術による解析結果は、証拠としての信用性が低くなります。標準化されたツールや手法を用い、手順書(ログ)を正確に記録・開示できる体制を整えることが求められます。

原則違反によって生じる問題

デジタルフォレンジックの三原則を無視して調査を行った場合、抽出したデータが法的な証拠として認められないという深刻な問題が生じます。例えば、適切な複製手順を踏まずに直接データを操作したことで、タイムスタンプなどの情報が書き換わると、改ざんを疑われて証拠能力が消失します。また、客観的な検証が不可能な独自の解析手法を用いた場合も、裁判所や対外的な交渉においてその正当性を証明できなくなります。

PPAP対策やメールセキュリティ強化サービス

サービスの概要資料を受け取る

デジタルフォレンジックの三原則を守る際の事例解説

実務において、デジタルフォレンジックの三原則の遵守が極めて重要となる具体的な状況を事例とともに解説します。

企業内の不正調査

企業内で横領や機密情報の持ち出しなどの不正行為が発生した際、デジタルフォレンジックの三原則に基づく調査が不可欠です。社内PCの調査において、適切な権限なしにデータを閲覧したり、保全前に通常起動してタイムスタンプを変更したりすると、証拠能力が失われます。三原則を順守して保全したデータのみが、社内処分や民事上の損害賠償請求において法的な効力を発揮します。

サイバー攻撃を受けた際の調査

外部からのサイバー攻撃やマルウェア感染が発覚した際は、揮発性の高いメモリ情報や通信ログが失われる前に、三原則に沿って証拠を保全することが求められます。感染した端末を安易に再起動・初期化すると侵入の痕跡が消え、後の解析でログの改ざんを疑われる原因にもなります。手続の正当性と解析の正確性を担保したうえで保全・調査を行うことで、行政機関や顧客への被害報告に耐えうる客観的な結果を残せます。

法的紛争・訴訟対策

企業の不祥事や従業員のデータ不正持ち出しなどが原因で法的紛争・訴訟に発展した際、デジタルフォレンジックの三原則を遵守した調査結果が決定的な証拠となります。裁判手続きにおいて証拠として採用されるには、データの抽出から保管にいたるまで客観的な正当性を証明できなければなりません。三原則に則った手続きを踏むことで、相手方からの改ざんの主張を退け、有利に裁判を進めることが可能となります。

PPAP対策やメールセキュリティ強化サービス

サービスの概要資料を受け取る

デジタルフォレンジックの目的

デジタルフォレンジックの目的は、サイバー攻撃や情報漏洩、社内不正などのインシデントが発生した際に、原因や被害範囲を明らかにすることです。電子機器やログデータを調査して証拠を保全し、不正の経緯や影響を客観的に把握します。調査結果を法的対応や再発防止策の検討に活用し、企業の信頼性維持やリスクの低減につなげます。

※参考:デジタル・フォレンジック|警察庁Webサイト

不正行為の原因究明・証拠収集

社内で発生した横領や機密情報の不正な持ち出しといった問題に対し、デジタルフォレンジックは原因究明と証拠収集を行う目的で実施されます。消去された操作ログやメールの送受信履歴、ファイルの閲覧履歴などを特殊な技術によって復元し、誰がいつどのような不正行為に及んだのかを明らかにします。ここで得られた客観的なデータは、社内処分や刑事告発を行う際の確実な証拠として活用されます。

サイバー攻撃や情報漏えいの原因究明

サイバー攻撃や情報漏えいが発生した際に、被害範囲の特定と原因の解明を目的としてデジタルフォレンジックを実施します。ネットワークログやアクセス履歴を解析することで、攻撃者の侵入経路や悪用された脆弱性、外部へ流出したデータの範囲を客観的に把握できます。ここで得られた結果は、監督官庁や顧客への正確な被害報告と、確実な復旧・再発防止策の立案に活用されます。

不正行為・情報漏えいの防止

デジタルフォレンジックには、不正行為や情報漏洩を未然に防止するという重要な役割があります。社内でフォレンジック調査の体制が整っていることや、ログが厳格に記録・管理されている事実を従業員に周知することで、不正に対する強い心理的抑止力が働きます。万が一の事態が起きても即座に原因究明ができる環境を維持することが、企業全体のセキュリティ意識の向上と強固なガバナンス体制の構築につながります。

PPAP対策やメールセキュリティ強化サービス

サービスの概要資料を受け取る

デジタルフォレンジックの手順

法的証拠能力を担保するため、デジタルフォレンジックは標準化された手順に沿って実行されます。初動のデータ保全から解析、報告、再発防止策までを段階的に進め、各工程で三原則を徹底することが信頼性の基盤となります。

0.事前に対策

デジタルフォレンジックでは、インシデント発生後の対応だけでなく、平時から証拠となるデータを適切に保存・管理する体制を整える必要があります。メールやチャット、アクセスログなどを日常的に記録・長期保管しておくことで、有事の際に証拠を迅速に収集・分析しやすくなり、原因究明や法的対応を円滑に進められます。

1.初動対応・データの保全

インシデント発生時の初動対応では、証拠となるデータが書き換わらないよう慎重に隔離・保全を行います。PCなどの対象機器の電源を安易にオン・オフするとデータが変化するため、通電状態を維持するか適切にネットワークから遮断します。その上で、専用のツールを用いて機器内のストレージをビット単位で丸ごと複製(イメージング)し、保全データを作成します。

2.解析・調査

保全した複製データを用い、専用のフォレンジックツールで詳細な解析・調査を行います。この工程では、削除されたファイルの復元や、隠蔽されたデータの検出、システムログのタイムライン分析などを実施します。ハッシュ値を用いて元データとの同一性を常に検証しながら作業を進めることで、解析結果の正確性を担保し、不正やサイバー攻撃の具体的な痕跡を明らかにします。

3.報告書の作成・法的活用

解析・調査によって判明した事実を基に、客観的な証拠に裏付けられた詳細な報告書を作成します。この報告書には、インシデントの発生原因、被害範囲、タイムライン、およびハッシュ値によるデータの同一性証明などを網羅します。三原則に則って作成された報告書は、裁判所への提出や行政機関への報告、さらには示談交渉や損害賠償請求における法的な証拠として強力な効力を発揮します。

4.再発防止策

デジタルフォレンジックの最終工程として、調査結果を基にした強固な再発防止策の策定を行います。解析によって判明したシステムの脆弱性やセキュリティ上の問題点、従業員の管理体制の不備などを徹底的に見直します。具体的な対策として、アクセス権限の厳格化、不審な挙動を検知する監視体制の強化、全社的なセキュリティ教育の実施などを進めることで、同様のインシデントが生じるリスクを排除します。

PPAP対策やメールセキュリティ強化サービス

サービスの概要資料を受け取る

まとめ

デジタルフォレンジックの三原則である「手続の正当性」「解析の正確性」「第三者による検証」は、抽出したデジタルデータに法的証拠能力を持たせるために不可欠な要素です。企業内で不正行為やサイバー攻撃による情報漏洩が発生した際、これら三原則に則った標準的な手順で調査を進めることが、企業の社会的信用を守り、法的紛争を有利に進めることにつながります。

万が一のインシデントに備え、適切なログ管理と保全体制を構築することが重要です。デジタルフォレンジックにおける「解析の正確性」を平時から担保するためには、データの消去や改ざんを防ぎ、証拠性を維持した状態で長期間保存できるアーカイブ環境を整備しておくことが重要です。

サイバーソリューションズでは、デジタルフォレンジックをはじめ、メールセキュリティやメールアーカイブなど、メールに関するさまざまなサービスを提供しています。多様なインフラ環境に対応しており、価格面にも配慮したサービス展開が特長です。

ENTERPRISEAUDIT Σは、進化を続けるメールアーカイブサービスで、メールだけでなくチャットデータも長期保存にも対応しています。法的証拠能力を保全したままメールやTeamsのデータを長期保存できるため、証拠保全基盤として機能します。情報漏えい対策やセキュリティ強化を検討する際は、ぜひご相談ください。

Cloud Mail SECURITYSUITEのサービス資料を受け取る

ENTERPRISEAUDIT Σのサービス資料を受け取る