近年、企業を狙ったサイバー攻撃が増加しており、その中でも特に被害が深刻化しているのが「ランサムウェア」です。ランサムウェアは感染するとデータが暗号化され、復旧のために多額の身代金を要求されるケースが多く、企業に甚大な損害をもたらします。
しかし、ランサムウェアによる被害は「あらかじめ感染経路を知ること」で防ぐことが可能です。この記事では、ランサムウェアの感染経路やその手口の変化、そして万が一感染した場合の対策について詳しく解説します。
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ランサムウェアのおもな感染経路
ランサムウェアのおもな感染経路は以下の7つです。
VPN機器やネットワーク接続からの感染
VPN機器やネットワークの脆弱性を突いてランサムウェアが侵入するケースがあります。
VPNは、外部からでも企業内部と同じレベルのネットワーク環境を安全に利用できる仕組みですが、VPN機器自体に脆弱性が存在する場合、攻撃者に利用される危険性があります。
特に、企業ネットワークへのアクセスを可能にするための設定ミスや、脆弱性のある古い機器が使用されている場合、攻撃者に侵入のきっかけを与えてしまうことになります。近年では、不特定多数を狙う攻撃だけでなく、特定の組織を狙い、長期間にわたり侵入を試みる「標的型攻撃」も増加傾向にあり、注意が必要です。
リモートデスクトップからの感染
リモートデスクトップ機能を狙ったランサムウェアの感染ケースも多発しています。リモートデスクトップは、離れた場所からオフィス内のデバイスを操作できる便利な仕組みですが、このシステムに不備があると、攻撃者に侵入される危険性があります。
具体的には、弱いパスワードやセキュリティ更新の欠如、権限管理の甘さが原因となる場合がほとんどです。リモートデスクトップを活用する際には、必ず強力なパスワードを設定し、2要素認証を有効にするなどの対策を講じる必要があります。
不審なメール・添付ファイルからの感染
最も一般的な感染経路の一つが、不審なメールや添付ファイルを介したものです。ランサムウェアは、フィッシングメールを利用して企業のネットワークに侵入することが多くあります。攻撃者は、信頼性のある組織や個人を装い、悪質なリンクや添付ファイルを送信します。
そのため、不明な送信元からのメールをむやみに開かないことが基本ですが、それだけでは完全に防ぐことが難しいケースもあります。従業員向けのセキュリティ教育や、メールのフィルタリングシステムの導入が有効な対策です。
Webサイトの閲覧による感染
悪意のあるWebサイトを閲覧することでも、ランサムウェアに感染するリスクがあります。攻撃者は、特定のWebページに悪意のあるスクリプトを埋め込み、訪問者がページを開いた瞬間にランサムウェアを自動的にダウンロードさせる手法を取ることがあります。このような手口では、ユーザーが気付かないうちにバックグラウンドでダウンロードが進み、システム内に侵入されることがあります。
対策として、業務に無関係なWebサイトへのアクセスを避けることが基本です。不正なポップアップ広告が目立つサイトや、異常に読み込みが遅いサイトなどは特に注意し、アクセスを控えましょう。
ソフトウェアやファイルのダウンロードによる感染
不正なソフトウェアやファイルをダウンロードすることも、ランサムウェア感染の原因となります。正規のソースではないソフトウェアやファイルには、ランサムウェアが仕込まれているケースがあります。
安全なダウンロードを行うためには、信頼できる公式サイトや認証済みのソースからのみソフトウェアやファイルを入手することが重要です。
記録メディアからの感染
USBメモリや外付けHDDなどの記録メディアも、ランサムウェア感染のルートになることがあります。例えば、感染した記録メディアをコンピューターに接続した際、システム内部にマルウェアが侵入し、ランサムウェアが展開されるケースがあります。
記録メディアからの感染を防ぐには、組織で管理された安全なメディアのみを使用することや、接続前にセキュリティソフトでスキャンを行うことが効果的です。
不審なアプリケーションの実行による感染
不審なアプリケーションを実行することで、ランサムウェアが侵入するケースもあります。攻撃者は、正規のアプリケーションを装い、過剰な権限を要求するアプリや、公式アプリストア以外の場所でダウンロードさせる仕組みを用意することがあります。さらに、公式アプリストアを偽装したWebサイトに誘導されることもあります。
対策として、アプリのインストール時に必要以上の権限を要求されていないか確認することや、公式のアプリストア以外からアプリをダウンロードしないように注意することが大切です。
ランサムウェアの感染経路の変化
ランサムウェア攻撃の手法は年々進化しています。以前はメールを介した攻撃が主流でしたが、現在ではメール以外の複雑で気付きにくい手法も増加しています。
それでもなお、従来のメール経由の攻撃は引き続き多いため、古い手法への対策を怠ることはできません。ここでは、従来の攻撃方法と現在増えている手法について解説します。
従来のランサムウェア攻撃
従来のランサムウェア攻撃は、おもにメールを利用して行われていました。攻撃者は、悪意のある添付ファイルやリンクを含んだメールを組織内の個人に送りつけ、ユーザーが不注意でこれを開くことで感染を引き起こします。
しかし、メールを介した攻撃は現在も多く見られるため、基本的なメール対策を引き続き行うことが重要です。たとえば、不審なメールを開かない、リンクをクリックしない、添付ファイルを開く前にセキュリティソフトでスキャンするなどの対策が求められます。
現在のランサムウェア攻撃
最近では、ランサムウェア攻撃がより複雑化し、侵入手段が多様化しています。メール経由に加えて、VPN機器やリモートデスクトップの脆弱性を狙った攻撃が増加しており、こうした攻撃は組織のインフラ全体を標的にするため、侵入されると甚大な被害をもたらします。
さらに、総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)によるパスワード突破や、ソフトウェアの脆弱性を利用した攻撃なども広く見られるようになりました。攻撃者は、侵入後にシステム内のデータを暗号化し、暗号化解除や流出したデータの非公開を条件に金銭を要求することが一般的です。
ランサムウェアに感染した際の対処法
万が一、ランサムウェアに感染してしまった場合、迅速かつ適切に対応することが被害を最小限に抑える鍵です。以下では、ランサムウェア感染時に取るべき具体的な対処法を解説します。
感染したコンピューターをネットワークから切り離す
ランサムウェアに感染したコンピューターを特定したら、最初に行うべきはインターネットから切り離すことです。
ネットワークを通じて他の端末やサーバーに被害が拡大するのを防ぐため、感染が疑われるすべてのデバイスをネットワークから隔離する必要もあります。この初動対応が迅速であるほど、被害の範囲を抑えることが可能です。
専門家に相談する
感染したコンピューターをネットワークから切り離した後は、社内のITセキュリティ担当者やサイバーセキュリティの専門家、場合によっては警察に相談してください。
専門家は感染状況を適切に評価し、データの復旧やランサムウェアの除去などの対応策を提案してくれます。また、警察に相談することで、犯罪捜査の視点から助言を得ることができ、再発防止策にもつながります。
金銭の要求には従わない
ランサムウェアに感染した場合、多くのケースで攻撃者から身代金の支払いを要求されます。しかし、金銭の要求には絶対に従わないでください。
身代金を支払ったとしても、データが完全に復元される保証はありません。また、一度支払うと、さらなる攻撃の標的にされる可能性もあります。
ランサムウェアの攻撃を防ぐ対策
ランサムウェアの被害を防ぐためには、日頃からの対策が欠かせません。以下では、具体的な対策方法を解説します。
OSやソフトウェアは最新の状態にする
使用しているOSやソフトウェアは常に最新の状態に保ちましょう。
ソフトウェアの更新により、既知の脆弱性が修正され、攻撃者に悪用されるリスクを減らすことができます。また、自動更新機能を有効にしておけば、更新を忘れる心配もなく安心です。
セキュリティ対策ソフトを導入する
セキュリティ対策ソフトを導入することで、ランサムウェアの検出や除去が可能になります。
リアルタイム監視や定期スキャンを活用することで、攻撃を未然に防ぐことができます。また、セキュリティソフト自体も最新の状態に保つことが重要です。
以下の関連記事も参考にしてください。
関連記事:【2024年版】メールセキュリティ対策サービスの比較ポイント5選を解説
定期的にバックアップする
重要なデータや機密情報は、定期的にバックアップを取っておくことが基本です。
特に、バックアップデータをネットワークから切り離してオフラインで保管することで、ランサムウェアの影響を最小限に抑えることができます。また、複数のバックアップを異なる場所に保管することで、さらなるリスク軽減が可能です。
なお、サイバーソリューションズでは、長期保管が可能でメール環境を問わないメールアーカイブサービス「ENTERPRISEAUDIT Σ(エンタープライズオーディットシグマ)」を提供しています。
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従業員へ定期的に教育しておく
従業員一人ひとりがランサムウェアのリスクを理解し、正しい対策を知ることが感染防止につながります。
定期的にセキュリティ研修を行い、全員の意識を高めることが重要です。また、社内ルールを明確に策定し、共有することで、全社的な防御体制を築くことができます。
ランサムウェアの感染経路を特定する4つの方法
ランサムウェアに感染した場合、その感染経路を特定することは、被害の拡大を防ぎ、再発を防止するために重要です。ここでは、感染経路を特定するための4つの具体的な方法を解説します。
1.システムログを分析する
感染経路を特定するためには、まず感染したコンピューターのシステムログを分析することが効果的です。
システムログを調査することで、不正な通信履歴やプロセスの実行履歴を見つけることができます。ログ管理ツールを使用して情報を収集し、接続先やポート番号などを解析することで、ランサムウェアがどのように侵入したかを明らかにします。
2.メールを分析する
ランサムウェアの感染経路の多くはメールを介したものです。そのため、感染したコンピューターに関連するメールを分析することも重要です。
まず、メールの送受信履歴を確認し、怪しいメールを特定します。その後、メールヘッダーを解析し、送信元のIPアドレスや添付ファイル、リンクの安全性を調査します。また、フィッシングメールを精査することで、攻撃者がどのような手口を用いてランサムウェアを仕込んだかを把握できます。
3.記録メディアを調査する
USBメモリや外付けHDDなどの記録メディアを調査することも、感染経路の特定に役立ちます。感染が疑われる記録メディアを特定し、その中のファイルを詳しく調べることで、ランサムウェアがどのようにシステムに侵入したかを明らかにします。
感染ルートが分かれば、それに応じた対策を講じることで、同じ経路からの再感染を防ぐことができます。
4.専門家に相談・依頼する
感染経路の特定や被害状況の調査は、専門家に相談することも効果的です。自社や個人での調査には限界があるため、ランサムウェア対応の実績があるセキュリティ調査会社に依頼することで、被害を最小限に抑えることができます。
まとめ
ランサムウェアはその手口が多様化し、企業にとって大きな脅威となっています。感染経路の特定や被害を最小限に抑えるための迅速な対応はもちろん、事前の予防策が最も効果的です。今回ご紹介した感染経路や対処法を参考に、従業員教育やシステムの管理体制を強化し、ランサムウェアへの備えを万全にしましょう。
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